
使わないと出てこない力、放っておくと衰えてしまう力が人間の持っている力なのです。しかも使えばすぐに出てくる力ではありません。使っているうちに徐々に表に出てくるのが人間の力です。こんな特別なものであるが故に、多くの人が自分の持っている個性に気付かぬまま終わってしまっている場合が多いのです。だから個性を育てるとは容易なものではないのです。
例えば、私は今、原稿用紙で70〜80枚程度ならば一日で書き上げることができるようになりました。100枚程度の卒論を数カ月かかって書いた大学時代が嘘のようなスピードで文章が書けるようになりました。毎朝生徒の日誌に眼を通して、何か一言感想を書いてやることを始めてから10年近く経ちました。ほとんどの生徒の日誌が原稿用紙1枚程度なのですが、それを見て返事を書くのに、一人1分もかかりません。自分で言うのは何ですが、こうした力を持てるようになったのは、毎日文章を書き、毎日日誌を読んでいるからです。それを何年も続けてきたからです。力を発揮するためにはそうした時間が必要なのです。一月やったから出てくるものなど知れているのです。まして況んや、その人をその人たらしめる個性が出てくるのには随分の年月が必要なのです。

第二高校の卓球部の顧問の話によりますと、一段階上のパワーのあるボールを打てるようになるまで、3ヵ月かかるといいます。計画的に3ヵ月、筋力トレーニングや栄養管理を続けて、ようやく1ランク強い球が打てるようになるというのです。卓球の球一つを強く打つだけでもそれ程の時間が必要なのです。

第二高校の卓球部の1年生に中学時代全欠という生徒がいます。不登校と呼ばれた生徒です。可能性を持っている生徒だと見て入学させました。その子が6月頃から日誌を出すようになりました。びっくりしました。その子が日誌を出すようになったことと、平仮名ばかり使った日誌であったことに。そして6ヵ月が過ぎました。既に大学ノートは2冊目になりました。漢字を使って書くように努力しているのが分かります。最初は3行程度書くのも精一杯でした。今では時に、2ページにわたって書いてくる時があるのです。成績もぐんぐん上がってきました。年賀状には「先生、卓球頑張ります。もちろん勉強も一生懸命にやりますので、今年もご指導よろしくお願いします」と書かれていました。続けることで力は出てきます。実はこの生徒は入学時の点数は全校で最下位でした。しかし2学期の途中で、習熟度の高いクラスに移り、そして期末考査では5番以内に入ったのです。
続けている中で力は出てくるのです。