
堺屋太一経済企画庁長官は、昨年の暮れ、「変化の胎動が見られる」と発表しました。小渕総理大臣も、「日本経済はいま、戦後もっとも厳しい最悪の不況を脱出し、底を打ちつつある」と発言しました。事実、底に入ったのではないかとの動きが見られます。軽自動車の売れ行き、住宅着工の伸び、パソコン販売の好転等が見られます。そして何より株価が1万6千円台にまで回復してきました。そして最近はゴルフ会員権の急上昇が伝えられています。
しかし一方、3月の完全失業率は4.8%に達しました。若し大企業が発表している通りのリストラを敢行すれば、就業者の10%が職をこれから失うことになります。渡米した小渕総理はシカゴ大学の講演で、「失業率の上昇は避けて通れないもので、これを乗り切って、新しい産業構造を作る 」と発言したと伝えられています。

では本当にそれで日本の景気は回復するでしょうか。第1章で述べましたように、21世紀に対応した産業構造への転換は不可避です。これなくしては日本の再生がないのは確かです。しかし残念ながら、日本はこのままでは衰亡するでしょう。なぜならば、現在の10年に及ぶ不況の原因は産業構造のみにあったのではないのです。バブルに踊り、不況に意気消沈する日本人の心こそがその根本にあるのです。ここにメスを入れ、ここを改革しなければどんな手だても泡と消えます。
橋本総理退陣直前から今日まで、景気下支えの為に120兆円余りがつぎ込まれました。国と地方を合わせた公的債務の残高は530兆円に及んでいます。今、日本はまさに瀕死状態なのです。国民上げてこれに立ち向かわねばならない時です。しかし、そうした中でのゴールデンウィークの海外旅行者の増加は何を示しているのでしょうか。昨年、破産状態に迄追い込まれたお隣の韓国を見れば分かると思います。失業率は2%から10%にも跳ね上がりましたが、一気に経済の再建を達成させました。危機以前の状態に戻っただけではなく、より多くの黒字を稼げる体質を短期間で作りだしたのです。日本と韓国の違いは何なのでしょうか。

良識ある経済家はこの秋、日本は二番底に向かって進むと予言しています。120兆円に及ぶ財政出動の効果が切れると言うのです。回復不可能と思われる程の借金を繰り返す日本です。果してこれ以上の赤字国債発行による財政出動が可能なのしょうか。
今政府が行うべきは、競争的環境を教育に取り入れることなのです。欲望を満足させることに追われた大人は我慢せねばならないのです。自分たちが作りだした負の遺産は自分たちが返すべきなのです。競争的環境の中で、逞しい個性的な子を育てることによって次の世紀に立ち上がれば良いではありませんか。自分たちが欲望を満足するために国家に甘えることを止めて、耐乏生活であっても、借金を返済することに努めては如何でしょうか。長銀や拓銀の経営責任が声高に叫ばれました。では、赤字の垂れ流しを許し、甘えてきた国民の責任はどうなるのでしょうか。自分たちがこの借金を返すべきではないでしょうか。そんな意識に若し日本人がなったならば衰亡の淵から蘇ることができるでしょう。しかし、こんな厳しい状況にありながらも、やれ休日を増やそう、推薦入学を増やして、と言っているのでは子どもたちに未来はないのではありますまいか。